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肝腎症候群 その1

腎臓内科医が診断や治療に悩むのが肝腎症候群(Hepatorenal syndrome:HRS)です。今回は肝腎症候群の歴史と病態生理について、2回目は治療について大事なstudyを取り上げながら書いてみます。
Cirrhosis.jpg
HRSの病態生理は、肝硬変などにより門脈圧亢進が続くと内臓や全身の血管拡張(splanchnic vasodilation)から有効循環血液量の低下を招き、その反動で交感神経が亢進し腎血管の収縮から腎虚血→腎不全をおこすためと考えられています。強力な交感神経系の活性から体液貯留をおこし腹水がみられるのも特徴です。
HRSの概念は1863年にすでにAustin Flintによって指摘されています。その後、肝性昏睡で亡くなった方の腎臓を剖検した症例報告によると、18/22人の腎臓は正常所見であったことがわかり、肝硬変に伴う腎不全は腎実質障害よりも、虚血による影響が大きいことが指摘されました。
これを実際画像で鮮明に証明したのがこのstudyです。HRSの患者の腎臓を造影すると腎虚血があるが(左)剖検時、腎臓を取り出し再度造影したところ今度は血管がくっきりと造影されている(右)のがわかります(注:HRSの腎臓を造影したのはこれが最初で最後だと思います)。
シクロスポリンが使用される以前の1969年のこの報告ではHRS(罹患期間5-104日)の診断で亡くなった方の腎臓を7人のESRDに移植をしたところ6人中7人が14日目で良好な腎機能を維持していたとされます。したがって今でも、HRSによる虚血による腎障害の可逆性を決める期間は90日程度とされます。

HRSの診断は除外診断ですので、腎前性の急性腎不全やATNなどを否定する必要があります。そういっても、最後までATNかどうかわからない事が多いのも事実です。HRSの診断基準は腎臓内科ではなく消化器医が決めています。このガイドラインは2007年に改定されましたが、以前あった尿中Na<10meq/lや乏尿の記載が外れているのと、最近では特に重要視されている腹腔内圧に関しての記載がありませんので注意が必要です。またCrの上昇の規定も曖昧で、肝硬変でよくある筋肉量の低下した患者さんは特にそうですが仮にCr0.5から1.4に上昇したら急性腎不全ですが、これだけみるとHRSの診断から外れてしまいます。したがってHRSの診断には注意をはらう必要があります。このあたりこの記事によく議論されています。

次回はHRSをの治療について書いています。

T.S
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