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腎不全におけるオピオイドの使用 (Part 2)

Codeine
Codeineはプロドラッグでそれ自体はオピオイド作用がありません。同じくCYP2D6により代謝されMorphineになります。この酵素の低い人種はPoor metabolizerといわれcodeineによる鎮痛作用が見られなかったり、逆にrapid metabolizerは急激にmorphineへの変換が行われ中毒作用を呈する人もいます。Codeineは腎不全では体内に蓄積しますし、分子量やVdが大きく透析では除去されないことから、透析患者での使用は禁忌です。

Fentanyl
Fentanylはmorphineの100倍もの鎮痛力を有するオピオイドで、即効性があり半減期も短い薬です。手術中の痛みのコントロール、癌の疼痛緩和や慢性疼痛などに使用されます。外来で処方されることが多いのが比較的緩徐に効くパッチですが、用量を守らないと呼吸抑制などの副作用を引き起こします。Fentanylは肝臓でほとんど不活性物質であるnorfentanylに代謝されます。中等度以上の腎不全では腎臓からの排泄が遅延することが報告されています。透析ですが、fentanylは分子量が大きく、タンパク結合率が高く、Vdも大きく親水性が低いので透析では除去されにくいです。

Meperidine
Meperidineは当初morphineなどのオピオイドに比べ効力があり、依存性が少ないなどとうたわれていましたが、実際はその反対で、痙攣の閾値を下げたり、セロトニン症候群をふくめ様々な問題があることが指摘されています。Meperidineは肝臓で半減期のきわめて長いnormeperidineに代謝されますが、腎不全があるとこの半減期がさらに延長し、血中濃度が上昇します。したがって腎機能障害のある場合は使用が薦められません。またnaloxoneなどのオピオイド受容体拮抗薬も無効です。その理由としてnormeperidineの抗コリン作用が指摘されています。この薬は分子量が小さく、親水性があり透析で除去されやすいと報告されています。
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Methadone
Methadoneは経口のオピオイドできわめて半減期の長い薬です。作用するオピオイド受容体がmorphineやheroinと同様で効力が長く持続することからアメリカではヘロインなどのオピオイド依存症の治療に使用されます。癌の疼痛緩和や慢性疼痛のコントロールにも使用されます。代謝物の排泄経路ですが半分は便、残りが腎臓です。きわめて親水性が低くVdが大きく、タンパク結合率の高く透析では除去されにくいのですが、少ない報告によると腎不全患者には安全に使用できる薬とされます。


オピオイドを腎不全患者に使用する場合は代謝物質が腎排泄のことが多いため投与量の調整が必要になってきます。腎不全/透析ではoxycodone、codeine、meperidineの使用は避けたほうがよい一方でmethadoneは便排泄であることと、fentanylは代謝物質が不活性であることから比較的安全に使用できるとされます。ただし、透析ではともに除去できないので注意が必要です。

参考文献

T.S
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