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CRRTを長く使用するためには

CRRTを凝固させないためにはどういったことに気を使うべきか?CRRTは通常、透析カテーテルを用いますが、理想的なカテーテルは短く、内腔の大きなものです。ただし実際はカテーテルの先端が内頚静脈から挿入された場合は右心房、そけいからの場合は下大静脈に位置するべきなので、長さはどうしてもある程度長いものが必要になります。このstudyでは100人のCRRTで長さの違うカテーテルを用いて観察した結果、右心房まで到達する長いシリコンカテーテルのほうが持ちが良かったとしています。内腔ですが、一般的にシリコン製のカテーテルはポリウレタンに比べカテーテル壁が大きい傾向があるのでカテーテルの太さに比べ内腔が狭くなります。またカテーテルの血流の入出口ですが、側壁についているタイプよい先端に入出口があるタイプのほうが原則静脈壁に吸着するなどの問題点は少ないようです。また中心静脈圧が低いほど、カテーテルトラブルが多くなりますので血行動態の安定化はCRRTのトラブルを減らすためにはもっとも重要な要素です。
prismaflex.jpg
Filtration fraction(FF)はダイアライザーが凝固するかどうか予想する大事な要素です。論理は簡単でFF=(限外ろ過液流/血液流)でこの比が高いほど回路内の血液濃縮から透析膜の目詰まりや凝固をおこす可能性が高くなります。限外ろ過液流=透析液量(QD)+補液量 (QF)+除水量(UF) の合計で、血流は厳密には血漿量なので血流量(QB)x (1-Ht)です。したがって
FF =QD + QF + UF/QB(1-Ht)です
透析膜内におけるを極力軽減するために、補液をダイアライザーの出口から返す場合(post-dilution)FFは20%未満に抑えるべきとされます。FFを下げる方法はいろいろありますが
1)血流をあげる
2)補液をダイアライザーの入り口から返す(pre-dilution)
3)UFを下げる
などがありますが1)と3)は制限がある場合があるのでもっとも簡単にFFを下げる方法はpre-dilutionです。この場合、血液が希釈されるため透析効率が落ちますが、透析回路は長持ちします。このことは小さなstudyで示しているとおりですが、興味深いことに平均BUNやCrはpost-dilutionでもpre-dilutionでもあまり変わらないとしています。これはpost-dilutionでは回路が凝固し透析が中断された時間が多かったため、結果的に一日の透析量が落ちたためと考えられます。

透析膜が凝固するといいますがclottingとcloggingの違いは知っておくべきです。Clottingはダイアライザーのファイバーが閉塞することに対して、cloggingは透析膜孔に血液やタンパクが沈着し透析膜の透過性が低下する状態です。したがってcloggingは透析膜の透過性の低下や中分子の除去率の低下を招き、transmembrane pressureがあがります。またcloggingはclottingを誘発するとされます。Pre-dilutionのほうがcloggingを引き起こす確率が少ないとされますが、UFを多く行うと逆に透析膜孔へのタンパクの沈着が大きくcloggingを引き起こしやすいという意見もあります。透析効率の観点からはpost-dilutionが理想的ですが、透析膜を長持ちさせるためにはpre-dilutionのほうがよいため、私のいる施設では補液を2つのポンプでpre50%、post50%の割合で使用しています。
透析膜の種類も重要です。アルブミンは陰性に荷電しているので透析膜の表面は電気的に陰性に荷電しているものが理想です。またタンパク吸収性の高い透析膜はタンパクが結合しやすく、それに伴う補体や血小板の活性から凝固が誘発されやすくcloggingやclottingに影響します。ただし、透析膜の種類によってcloggingやclottingを比較した大きな前向きのランダム化臨床試験は今の時点ではありません。

CRRTを長持ちさせる要素はもちろん抗凝固剤が大きなウェイトをしめますがそれ以外の要素について簡単におさらいしてみました。

T.S
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