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透析患者の降圧薬(その1)

透析患者の血圧薬の使用は患者さんが至適体重(dry weight)に達していることや塩分制限ができていることが条件ですが、週3回の血液透析では降圧薬を必要をするのは一般的です。降圧薬を処方する際、透析に関連した薬の薬物動態といくつかのスタディーを知っておくと良いのでおさらいします。
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レニン-アンジオテンシン系阻害薬はその安全性と忍容性から透析患者には第一選択薬になります。ここで知っておく必要があるのはACE阻害薬(ACE-I)の多くは、透析患者では半減期が長くなることと透析で除去されることです。一方、アンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)は除去されません。したがって透析中に血圧が下がる患者さんにはACE-Iはよい選択となるでしょうし、透析中の高血圧が問題なら透析で除去されにくいfosinoprilやARBを使用すると良いと思われます。ACE-Iは透析で除去されますが、透析後に投与することにより血圧を比較的良くコントロールできたことをこの小さなstudyが報告しています。ACE-I以外の降圧薬(2剤まで)を内服中の透析患者11人に透析後lisinoprilを追加投与して血圧をABPM(24時間血圧測定)で観察した結果、4週間後には平均血圧が22/11mmHg低下したとしています。ACE-Iを透析患者に投与する際、高K血症は考える必要はあるのでしょうか?腸管からのK排泄は透析患者では通常よりも高く[8 (non HD) vs 20 mmol (HD)/day]ACE-Iが腸管からのK排泄を阻害するかは定かではありませんが、一般的に無尿の透析患者でもACE-Iによる高K血症には注意する必要があるようです。
ACE-Iの透析患者の予後についてはこのstudyをみてみます。Fosinoprilかプラセボを400人近い透析患者に使用しプライマリーエンドポイントである心血管関連eventを2年間観察した結果、fosinopril投与群はコントロール群に比べ降圧効果がよかったのと、有意差はなかったものの心血管関連eventを低下したとしています。
ARBの透析患者への影響ですが、この日本で行われたopen label study (valsartan, candesartan, losaratan対プラセボ )によると360人ほどの透析患者をARB を含んだグループとそうでないグループに分け3年間観察した結果、両グループとも降圧を達成できたもの、生命予後に差はなくARBグループは心血管関連eventの低下をもたらす可能性があるとしています。

ACE-I/ARBの透析患者への使用は降圧効果と心血管eventの低下に関連している可能性があり第一選択薬として推奨されています。ACE-Iの多くは半減期の延長と透析で除去されるのが特徴である一方、ARBは透析では除去されません。次回はカルシウム拮抗薬、β受容体阻害薬や他の降圧剤について触れてみます。

T.S
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