「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

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Clinical J-1ビザでのリサーチとその制限

フェローシップ中にリサーチをすることは、多くのプログラムで重視されおり、義務化されているところも数多くあります。腎臓内科のフェローシップは通常2年間で、その間にリサーチも行いますが (Fellows schedule)、所属するプログラムの条件によっては3年間、もしくは4年間の研修が可能です。通常、3年目以降の研修ができるかどうかは、プログラム、もしくはフェロー/メンターの資金次第となり、この資金源は、グラントがとれるかどうかに関わってきます。グラントを獲得するのは至難の業ですが、グラントを書くこと自体が良いトレーニングになるので、フェローシップ中にグラントにチャレンジする価値は大いにあると思います。ちなみに、National Kidney Foundationの資金が尽きたため(サポートしていた会社が倒産)、American Society of Nephrologyがかわりに立ち上げたフェローシップグラントが、今後腎臓領域では一番の頼りどころになると思われます(おそらく成功率は他のグラントと同様10%台あたりと、厳しいことには変わりないと思います)。
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アメリカで臨床に従事している日本人レジデント、フェローはClinical J-1ビザで渡米している方が多いと思います。フェロー終了後もアメリカに残ってリサーチを続けたいと希望する場合、ここでClinical J-1ビザの制約に直面します。まず、J-1 waiverをこなさないといけません(もしくは、時間と条件が合えばO visaに切り替えるのが、現実的には”2 year rule”を乗り越える別の策かと思います)。J-1 waiverをこなしながらリサーチを続けるためには、本当の僻地に行くわけにはいかないので、VA(退役軍人病院)で職を見つけるのが良いと言われています。VAはVA独自のグラントシステムを持っていて、研究をサポートしてくれます。しかし、自分の研究テーマと合致するVAが見つからないかもしれませんし、そもそもVAの研究スポットは空いていないことのほうが多いので、適したVA職を見つけるのは容易ではありません。さらに、VAはwaiver終了後のグリーンカード申請をサポートしないので、本当にアメリカでphysician scientistとしてやっていこうと考えている場合、長期的には問題があります。ある移民弁護士が冗談まじりに、”They (VA) need you, but they don’t like you.”と言っていました。National Institute of Health (NIH)も政府組織なのでwaiverができるとの噂を耳にしたことがあり、実際に尋ねたことがありますが、Clinical J-1 waiverをNIHでリサーチしながらこなすというのは、受け入れていないそうです。

そうなってくると、市中の病院でJ-1 waiverをこなしながら(waiverは意外に多くの都市部でも可能)、臨床片手間に研究室に通いつつリサーチを続ける、という策を考えますが、今度はグラントに応募できないという制限に直面することになります。なぜならば、グラントが取れた際には通常7, 8割の時間を研究に割くことが条件なのですが、J-1 waiverをしているとそのようなな時間が取れないからです。

ビザの種類が何であれ、外国人であるということ自体が、グラント応募時には大きなハンディキャップになります(もちろんアメリカ人からみれば、その制限は理にかなっていると言えますが)。フェロー終了後に応募できるグラントは各種ありますが、応募資格の規定に、アメリカ市民、もしくはグリーンカード保持者のみと指定されていることが一般的です。ビザでも応募できるがアメリカ人を優先する、と明記しているグラントも多くあります。アメリカでキャリアを築くために重要なNIHのKシリーズ(Career development grants)もアメリカ市民権が必要です。通常、臨床に関わっているM.D.が応募するのはK08 (basic research)かK23(clinical)です。R00/K99だけは市民権不要ですが、これはPh.D.ベースのスーパースター達が、今にも独立できる状態で応募してくるので、臨床にも時間を割いているM.D.にはとても歯が立ちません。また、応募資格がフェロー終了後5年以内なので、J-1 waiverを3年間もしているとあっという間にチャンスを失います。

まとめますと、Clinical J-1ビザはその名の通り、臨床トレーニングのために設けられたビザなのだと言えます。

波戸 岳
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