「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

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ASN2014

最近は忙しくてすっかり、ブログから遠のいていました。先週ASNに行ってきましたが、臨床的な新しいデータでは膜性腎症の原因に新しい蛋白が見つかったことは大きかなと思います。
多発性嚢胞腎の研究ではRASの二重阻害(ACE-I+ARB)は早期後期ADPKDにおいてもACE-I単独と変わらないという結果でした。早期ADPKD では血圧を低く設定すると(収縮期で95-110)、若干、嚢胞の大きさに有意差があったようですが、低血圧によるリスクもあるので概ね、ACE-Iを使用して130くらいの血圧にするよう推奨されています。あとは臨床研究ではネガティブスタディーが多かったようです。

どの分野でも、遺伝子関連の研究は進んでいて、原因蛋白が特定できている疾患はmiRNA, SiRNA, antisense oligonucleotideなどを駆使し、そのタンパク合成を阻害、もしくはその蛋白を分解する過程を阻害することにより、蛋白を下げたり上げたりできる様になり、今後この分野はcancer同様、腎臓病の治療でも中核となっていく気がします。
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プレナリーセッションはヤング・インベスティゲーター以外はいずれも秀逸でした。なかでもデンマークの進化生物学のEske Willerslevの講演はパワーあふれるいいプレゼンでした。人(サピエンス)はアフリカを起源としていますが、ヨーロッパへの移動の前に、すでにオーストラリア方面(4万年ほど前)に移動を開始していたことが遺伝子研究から分かっているそうです。アボリジニーはきっと先祖をたどると、世界で最も最初のサピエンスに起源を置くかもしれないですね。これに関して、オーストラリア政府が彼にグラントを出すそうです。ネイティブアメリカンは遺伝子解析から北ヨーロッパと東アジアの混合であるようです!なんとなくアジア系だなとは思っていましたが、北ヨーロッパは驚きです。さらに、ネイティブアメリカンの一部はグリーンランドに渡り、そこで絶滅していることもわかっているそうです。いまはヨーロッパ系が居住していますが、もとはヨーロッパ系の民族が地球を反対周りの経路でたどり着いていた事になります。驚きです。民族移動は約1000マイル/generationだそうです。当時の寿命が30歳位だとすると、ほとんど移動生活をしていた計算です。定住もしないで、同民族で移動しつつ近親による子孫の繁殖から予想される遺伝的障害も考えると、生き残りは大変だっただろうと予想できます。こういった人類の遺伝的研究はほとんど骨の解析から行われるわけですが、彼のプレゼンで石化した人の糞を解析したエピソードもあって面白かったです。普通の人なら石だと思って蹴飛ばして終わりですね。このEskeという人は、一年に400回も飛行機にのって世界を飛び回っているとか。いやはやすごいです。

毎年写真とっているのに忘れてしまいましたが、日米腎臓のメンバーとも集まりました。来年からブリガムで腎臓内科フェローを開始する予定の村上尚加先生(現在NYベスイスラエル内科研修医)とクリーブランドクリニックで腎臓内科フェローをする予定の山田雅晶先生(現在クリーブランドクリニック内科研修医)のほか、UCLAの腎臓内科フェローの宮田(野城)加菜先生にインディアナ大の波戸岳先生と私の5人でしたが楽しい集いでした。腎臓内科はアメリカでは人気が少なくなってきていますが、こうやって日本人の研修医の方が少しづつ増えていることはとても嬉しいことですし、今後このブログも彼らの力も借りて、どんどん情報の発信をしていければ幸いです。

TS
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